日之影の竹細工職人 廣島一夫さんの仕事展

今日は店を休んで、ぜひ見たいと思った展示を見てきました。

「日之影の竹細工職人 廣島一夫さんの仕事」展

 

ギャラリーKEIAN

文京区白山4-8-11

03-3941-0022

 

個人商店の運営は、やること湯水の如く湧き出づるもの。線を引かないと、店から出られなくなってしまいます。行きたいと思ったものは、店を休んでも必ず行くこと。見て、感じることが、自分にとって大事。私が心豊かにいられないと、接客もギスギスになりますからね。自営業の約得で、店はおやすみ。

 

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店主には、大分は国東で地域おこし活動「みのや」を運営している友人がおります。

 

8月にあったみのやの東京イベントで、竹細工ワークショップに参加したのですが、見たものと、手で感じることのギャップに驚くとともに、やはり、「体験や経験したものだけ」が「自らにとっての真実の蓄積」になると改めて認識。

 

ついでに、竹細工に対して、楽しさも見い出せたので、もっと知りたくて、まずは良いものをたくさん見たいなと思っていたところに、FB友達の中津箒・吉田慎司さんの投稿で、ギャラリーKEIANの展示を知り、すぐに手帳にメモ。

 

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展示されていた竹籠など、人の手で作ったとは思えないほど、均一な様子。

 

この場合の均一とは、「バランスが良い」とか、「調和が取れている」と言った意味合い。ゆらぎのある美しさで、見飽きない端正な作りで、これを日常のありふれた道具として使っていた世代が、羨ましくて仕方ありませんでした。

 

何しろ立体、三次曲面も多い竹細工。

図面のようなものがあって作れるものもあるかと思いますが、竹は節がある素材で、節を無視して編むことは出来ないもの、というのは、友人「みのや」のワークショップで折込済み。

 

 素材を活かす「応用方法」の連続なのに、廣島一夫さんの笊や籠は、どれもとても美しく、年月が経っていてもほつれもなく、つやつやと美しい色合い。美しい比率や繰り返しの美に見入って、感動でした。

 

 途中、廣島一夫さんを特集したTV番組のビデオを見て、生前の廣島一夫さんの人柄に少し触れられた気分。話す言葉のひとつひとつに、人生の示唆を含んだいい言葉だらけ。思わずメモってしまいました。

 

 「私の勝手に いい を作ることは出来ない」という言葉が印象的でした。道具とは、使う人の役に立つものですから、使う人がこうあって欲しいという機能を満たすべきで、作り手が自己満足してるものはダメだよね的なことをおっしゃっておりました。

 

(私も、自分の思いの強さを押し付けることはしてはいけないなと再認識)

 

 ギャラリー主催の堀さんと、雑談した時にも話しましたが、お客様の中には、「これ、何に使うものなんですか?」と聞いてくる方がいらっしゃいます。用途は分かっていますよ、だけど、このサイズまたは形状を見ていると、「私の生活の中にはどう使えばいいのか思いつかない」ので質問しちゃうんだけど、「一体、これって何専用なんですか?」という問いなのです。

 

 ぶっちゃけ、今日の今日まで「なんて想像力が無い方なんだろうか」と嘆かわしい気持ちになっておりました。いまどきの方は、商品=提案があるものという電化製品的な売り方に慣れてしまって、その様式の売り方じゃないと、受け止めてもらえないのかなと困惑したものです。

 

 これ、いま振り返ると、私随分浅かったかも。

 

 でも、今日見聞した廣島一夫さんの言葉からすると、違う見方も出来るなと思いました。

  

 あれは、「私にとって」用途が分かんないものを作って、せっかく作ったこの品物には、「誰のための」「どんな価値がありますか?」って言っているともとれます。

まさに、道具とは、使い手の欲しいもの以外は、無用という真実を、お客様は訴えていたのではかなろうかと思えてきました。

今のように、出来合いを見て、自分の間尺に合う/合わないを判断するのは、実はモノづくりとしては順序が逆なんですよ、きっと!

 

「私はこういうのが欲しいの!」という個人の要望に、1点1点対応するような、そういうモノづくりは、今の大量生産的工業製品だと対応不可能なので、売れない商品が大量生産されることも多いのかな。

 

ニーズの無いものを作らないことは、資源温存で環境にも優しい。

そして、個人ニーズは有象無象あって、マーケットの大きさにかけては、存在する人数分ある訳ですから、オンデマンドな手工芸・手工業は、もっともっともてはやされるようになるはず・・・なので、私の大好きな工芸の未来って、明るいんじゃなかろうかと、モヤモヤ妄想しながら帰り道。

 

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KEIANの次、御茶ノ水で「お茶の水熱烈楽器祭×明治大学ホームカミングデー」で、最近知って気持ち入れ込んでいる「カルメラ」ライブを楽しむ。

 

 彼らのライブを見るたび、聞くたび、

「楽しくないとダメ」を思い知らされます。

裏返すと「楽しいことには私みたいな朴念仁さえ魅了されて踊る」

 

拡大解釈すると、何か世の中で価値を見出されずに廃れかけている、私が大好きな工芸分野だって、楽しい事がちゃんと伝えられたら、それいいね!ってファンが増える見本のように見えてくるのです。

 

 門戸を広く取るためにも、楽しさや快感を、どれだけ伝える事ができるかが、私のような小売店のお役目だなと改めて思いました。

 

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 楽しい1日でした。

 明日からまた、お店頑張ります。