【バルバラ異界/萩尾望都】

萩尾望都さん、大好きなんですが、いつも私の中には無い複雑さで、読後の消化しきれないもたれ感が何とも切ないお話でした。「銀の三角」の時も、読後のモヤモヤが凄くて、誰もがすっきり幸せになれていない状態が、単純な幸せを望んで生きているわたくしには、とにかく重たくて重たくて。

 

「バルバラ異界」も、重たかった…

そもそもは、11月に「11月のギムナジウム」と「11人いる」を読み返したのがきっかけ。中学高校の頃に読んで、世界観にため息をついていた作品を読んだら、改めて萩尾望都さんの凄さを感じ、「ポーの一族」を読み、またまた感じいり、最近の作品を読んでみたくなったのですよね。

SFという触れ込みだったので、「スターレッド」の軽快さを思っていたのですが、謎が解けたような、新たな謎が出てきて混迷深まったような…スピリチュアルの「私とあなたはひとつ」みたいな言い方が腑に落ちていない人は、これで少しヒントをもらえるかもしれないかなとも思いました(私がそうだったから

 

この世は私が見たいように見ている世界。

だから未来は夢のようなもの。

そして、今と未来は連続的につながっていて、例えばコンマ1秒の未来と今との差を考えると、差が無いも同然と感じられてきます。現実と妄想の狭間、夢を見ることが、未来を作ることに繋がるかもしれない。

設定で、心臓を食べることで、あるタンパク質を取り込むと、それが消化分解されずに脳に届き、封印されていた記憶を解放するというのがあり、学校以外の科学が好きな方なら分かる「人体の不思議」がまぶされていて「あー、そう来たか!」と設定の面白さ、旨さに笑いが出てしまいました。

青羽以外にも、幸せな夢に書き換えたいと干渉していた人がいるとうっすら分かる描写は、今の世界情勢に不安を感じる私には、みんなそういう感性があるから協力していけると言われているようで、ホッとした部分。

私も、夢を見よう。

幸せな夢を見よう。

それにしても。

渡会氏が息子キリヤを失うというか、未来選択のオルタナティブでタカをキリヤとしなければいけない未来を知るとかいうの、ちょっと離れた目線で見たら、AがBを押しのけてCという結果を手に入れいているかもしれないと見たら、複数の玉突き変更があったはずで、渡会氏の悲しみは、どれだけの玉突きを象徴しているのか、考えるだにシニカルな面白さ。

渡会氏、改変を願わず、受け入れる方向で、でも受け入れるために改変前の関係性を思って、涙する訳です。涙、涙。

でも、受け入れる。

全体を見た時に、絶対的に幸せなら、諸々に目をつぶって幸せ認定で享受する感じが、ひとの社会性や業を見るようで、私だったらどうしたろうか?と寝る前に読んだ2回目の最終巻。

多分、今の私なら、影響力の大きさを追わず、私の愛する家族でいて欲しいから、そういう選択肢を選び、地球滅亡かも(苦笑

やっぱり、萩尾望都さんは凄い。