お手玉

お客様で、痴呆症が出始めたお母様と散歩しながらお立ち寄り下さる方がいらっしゃいます。少し話をしたところ、お世話するのは苦ではなくて、一緒に過ごせて幸せな時間をもらった気分でいるとおっしゃっておりました。笑顔が、なんとも言えない方で、本心苦労と感じていないのだろうと思いました。

 

私もそうですが、ある年代の日本の親は忙しくて、今の若いママほど子どもに構っていられませんでした。今のママが楽とかいう訳ではないですよ。時間の使い方と悩みどころが違っていたのです。

 

私の母だって、働いて食べさせてバタバタバタ…ゆっくり夕食時に会話を楽しんでなんて、思い出すと大学生になった頃にようやく叶ったと思います。でも私は他県の大学への進学で、そのまま家から離れて就職しましたから、『人生での親子の時間の密度』があるとしたら、低い濃度なんだと思います。

 

だから、お客様が、お母様に痴呆が出ようが日常生活の会話を楽しんで、いたわって気遣って助けてあげながら、若い頃不足していた親子の時間を楽しんでいるのでお世話が苦じゃないというのは分かる気がするのです。

 

で、件のお客様が先日来店した時に「お手玉、扱ってませんか?母が、他のところで触った時にいつになく興味を示したから、あれば一緒に遊べるのになと思って」と雑談。

 

お客様に「また顔出して下さい、仕入れときます」と言ってみたものの、値段の安くて調度いいのが見つかりません。あっても仕入れロットが多すぎて私の負荷が大きすぎる。

 

う~ん…最悪自分で作ろうか?と思いながら和裁士しおやにメールしたところ「やってみるよ」と返信が返ってきました。ありがたい。

 

こんな人がいてね、こういう事情があるんだけど~…と説明したせいでオレがやらねば誰がやる的思いで作ってくれる気になったのかと思います。

 

そして翌日生地を受け取りに来てくれて、更に翌日には納品してくれました。それも、大きさを少し変えて2種類持って来てくれて、手に取りやすい大きさを選んでもらおうということらしい。

 

優しい人なんです、しおや。

早く、件のお客様に見てもらいたいです。