意外と知られていない「たわしのあれこれ」

今でこそパームヤシのたわしが主流ですが、日本で採れるたわしの原料と言えば棕櫚でした。パームヤシの繊維は、戦後アメリカから輸入されてきたのが始まり。当時、棕櫚と比べるとパームヤシは非常に廉価だったので、徐々に棕櫚からパームヤシへと素材変更が進んだそうです。

 

そして、今ではスーパーでも100均でもパームヤシのたわしが並んでいます。でも、パームヤシは繊維が太くて硬いです。これが「たわしで洗うとテフロンが傷つく」といった印象に直結。でも、棕櫚はパームヤシに比べて繊維が柔らかくて腰があるので、洗う感触が優しいものなのです。

 

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環で取り扱っているたわしは高田耕造商店さんが作っています。和歌山県海南市にあるたわしメーカー。三代目・高田英生氏が職人技で手巻きしているたわし屋さんです。

 

柄のついたズックブラシを最初に作ったのはこちらの会社と言われています。残念ながら、昔はパテントを取るなど、いまのようにギラギラした権利主張をすることが無い商習慣だったので、いろんな会社が柄つきのズックブラシを作り広まりました。(社会のためになりましたね、素晴らしい)

 

体を洗うやらこいたわしは、国産棕櫚を使っております。繊維の太さや質を職人さんが手と機械を使って選別し、全体で15%しか採れない細くて柔らかい繊維を集めて作ったたわしです。

 

今では国産の棕櫚は幻とまで言われるほど生産量が少ないです。90%以上を輸入品に頼っております。ちょっと格好がいい棕櫚のほうきも、大体が中国からの輸入棕櫚を使っております。欲しくても、まとまった量が手に入らないのが国産の棕櫚なんですって。

 

そんな国産の棕櫚を使ったたわし。

機械巻きではなく、職人さんがひとつひとつ手で巻いております。職人技の凄いところは、使っていて、棕櫚の繊維が抜けたりしないところ。店主がかれこれ半年以上使っておりますが、繊維の中折れや抜けが無いのです。

 

一生使えそうなたわしだなと思ったりして。

 

実際、機械巻きで作られた市販のパームヤシのたわしは、毛が抜けて痩せます。丸いカーブの部分から抜けてきます。職人は、それが分かっているので、カーブの部分は少しテンション強めに加減をしているそうです。

加減。

これはきっと口では表現しにくい感じなのだと思います。言われても分かりませんから。職人技は明文化しにくい感覚の世界が広い感じがしますよね。 

 

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棕櫚のたわしですが、お風呂で使うと、棕櫚が濡れて水を含みますから乾いている時より更に柔らかくなります。柄がついていると、痒いところに手が届いて、背中が気持よく洗えます。


たわしで体を洗って気が付いたことが、この時期、すねの皮膚が乾燥で白くならないで過ごせていること。高田耕造商店さんと雑談した時に教えてもらいましたが、棕櫚の繊維の表面は松ぼっくりのようにうろこ状の組織が折り重なっているそうです。そのうろこ状の凹凸が、角質を落としてくれるという仕組みなんですって。

店主も毎日使って良さを実感しているたわしです。

たわしは硬くはありません。やらこいです。

 

オーダーすれば、手にジャストサイズの大きさに作ってもらえる他、毛足の長さを調節してもらえば、柔らかくも硬くも作ってもらえます。職人が作る手工業品は、こういうカスタマイズが簡単に出来るところが素晴らしいと思います。


工業製品に合わせる生活から、自分にモノを合わせる生活へ。それが出来る品物のひとつが、この高田耕造商店のたわしです。

 

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