摩利と慎吾⑦~摩利とささめについて

私は、木原先生の描く女の子が今一つ好きになれない派。

 

そして、摩利とささめの関係性はどうにも分からない派。

 

『本人達がそれでいいならいいけどさー』的な乱暴な気分が晴れません(苦笑


最終話で明かされる、摩利の子を産んだのはささめちゃん。ささめとの再会で摩利が少し緩んだのは確かだけど、どう見ても強い感情が動いたでもなさそうで、読んでもどこか疑問符が残ったまま。

 

2人の心のつながり方がよく分からない。

 

借り腹的な関係と思うと、ぶっちゃけ摩利は誰でも良かったのだし。

 

好きになった相手と子作り出来ればいいとは思うが、誰の事も慎吾以上に好きになれない。

私も経験があるのだけど、気に入っても比較してしまい、気に入っていると感じている感情さえ、本当なのか曖昧に感じる、分からなくなる。そんな相手を選ぶ決め手がなんて思い浮かばない。

 

大事な取引なら身売りもする覚悟はあると言い切るし、そう言って公に抱かれる摩利だから、義務、仕事と割り切って、子作りの道具にする代償に妻に迎え、仕事にかまけて遠い距離感を保って過ごすだろう。


じゃあささめはそれで良かったのかな?と言えば、子供が持てて良かったと言っているのだし、それで良かったのだろうなと思うしかない。

 

恋していると、自分が傷つくようなことでも、何でもしてあげたくなるものだし、ささめはそれで悲しい別れがやって来たとしても、子供が残るという計算もあったと思う。

そう言えば、摩利は美女夜では気が乗らないから、美女夜から何度も告白されてもなびかなかったんだった。誰でもいい訳ではなかった。

 

恋人だけにはなってくれない慎吾に対して、血を流し続ける自分の心を抱えているからこそ、美女夜みたいに本気で好きになられると、自分からは何一つ愛を返せないので苦しませるしかないと分かるせいか。

 

全部分かっているから、いいのよ、と言われても、ずっとその気持ちのまま変わらずいられる保証もないのが女心だし。関係者が重なっている同士だと、もめて別れた日にはどんな影響がでるかも面倒だし。ささめはその点、何があろうが余計な口出しもせず、ただ傍に控えているだけだろうなと予想がつく。

 

ささめ。

子供は鷹塔家に認知され跡取りとなったが、妻の座(入籍)は辞退したとある。「私のようなものが」と枕詞をみると、出自の不釣り合いやバツイチを良しとしなかったのだろうなと予想はつく。これは時代的な価値観もあるだろうから、私が理解出来ずとも致し方ないところ。ただの少女漫画なら結婚して温かい家庭を築きました的に丸めることもできたけれど、人生はままならないのが木原ワールド。そして現実でも、そんなものかと50代になると思います。

もうひとつ、摩利は、結婚は、最愛の人と結ばれてこそだとささめは思っていたかもしれない。離婚経験者だもの、断った理由のひとつはそれもあるかもな。

普通に考えたら、知人とはいえ短期間の交流で、再会したからと特別な関係になるほどの仲でもなく、誤解しようがなかったか。却って、摩利が自分を構う理由が他にあるのかもなと、察したぐらいかもしれない。ささめはそこまで鈍くもバカでもない。

 

ささめちゃんは、まだ学園わちゃわちゃものだった頃の登場人物で、みなしごの住み込み女中が、摩利への片思いを胸に、人に押し付けられた結婚を受け入れ、渡欧。旦那様の文太郎さんの別れ際ひとつ見ても、妻として大事にされていた様子が見て取れない。一二三と似たような生い立ちながら、ささめの人生は、とにかく「幸せエネルギーが少ない」のです。

一二三の周りには、目を掛けてくれる一座のみんながいて、笑顔溢れる日々もあった。慎吾と出会ってから、慎吾の周りの人々のお目こぼしで好機を得ることもあり、慎吾に近づこうと努力する姿が好ましければ、周りがまた支えてくれる好循環。

 

夢殿が、密航をとがめられた一二三の身元を引き受けたのはちょっと意外でしたが、片思いの同病相憐れむで、夢殿の摩利熱の強さをも思わせるエピソード。美女夜も摩利も、一二三の慎吾への思いを知り、思いやる素振りだし。

ささめの欧州暮らし。

文太郎との関係性は、愛妻というより下女のような妻ささめ。察した人は多かろう。

 

でも恨むでもなく、卑しいところもなく、善良なささめに厚意を示す人はいたはずで、そういう人達とのつながりの結果が、ジプシーの子供ルペルを引き取り面倒を見ることにもつながっていると思う。どうでもいい関係性なら、孤児院へやって終わるだろうから。

 

ささめは、ずっと一人で生きてきた女の子。

 

一二三よりひとりな女の子ですな…そう思うと憐憫の情がわいてくる。

 

だから余計と摩利がどう思っていたのか分からなくて気分が悪い。

 

分かったとしても、気分が悪いと予想。

 

1番は慎吾、女は愛せない、特別には出来ない。

子供は義務もあり作ったから、父として構えるかどうか怪しい。子育てはささめに頼ることで、ささめこそ一人老いて寂しくならないようにと思う。自分は世間一般のような愛ある家庭は作れない男、作る気にならないし。仕事は楽しい、仕事にかまける中でいろんな出会いで暇つぶし、たまには愛人も作る。でもどんなやりがいのある仕事だろうが、魅力的な人に出会おうが、やっぱり一番は慎吾。ささめがいたら子供は愛を受けて育ち、自分みたいなダメ親のことを許してくれるかもしれないし、ああ慎吾の代わりなんて見つかりはしない、慎吾、慎吾。


私の中で、摩利は身勝手で嫌な奴だ疑惑が濃厚になっていく訳ですよ。

篝かがりの時に表れた摩利の他者への冷たさ、あれが摩利の本質。慎吾にそう見られたくないからきれいな摩利でいたけど、隠すのが上手なだけで、中身の闇は年を取るほどに深くなっていったろうと私は妄想。慎吾に認められたい心が、黒い心と白い心のバランスをぐぐっと白寄りへと偏らせ。

 

ささめは摩利の人生の中で、何割リソースさく相手だったか。

 

ほとんど空気みたいな存在に思えちゃう。おや、慎吾に対して摩利がなりたいと思っていた「水や空気と同じ意味をもつ存在」にキーワードを思い出すが、そうなのか?そんないいものか?

 

ささめは、摩利が捨てた万年筆をこっそり拾ってお守りのように持ち続けていた訳ですが、渡欧するまで/渡欧した後も、大して摩利のことを知らないままなので、ファンタジー的に憧れて好きだったのかなと思います。

 

摩利は再会後、ささめを引き取ることにした訳ですが、ささめにしたら人生で一番望んだ摩利の側にいられることになって、いきなり満願成就だったかも。ささめに、美女夜や姫花のように自分の幸せを求めて恋に素直になれと言っても無理な話で、誘惑も媚びることも出来なさそう。

ささめは人に尽くすしか好意を表し様がない人。
篝かがりが、人を傷つけることでしか好意を表せなかったのと同じ。

そう思うと、誰しもその人なりで偏っているものなんだな…

帰りの遅い摩利をただ待って、部屋の灯をともし続けおかえりなさいと笑顔で迎える。おやここでもまた、「水や空気と同じ意味をもつ存在」にキーワードが近い。

これ以上望むより、手に入ったポジションを維持することでもう十分と思ったろうか。叶い過ぎると怖いくなる人もいる。ささめは、対等な関係性がこれまでの人生でなかったろうから、相手に期待せずとも、自分はこう思う/自分はこうして欲しいと言う事もなかろう。いつも相手の気持ちを察して、自分の心は置き去りの女の子。

 

摩利も、摩利の魅力や利用価値を思って迫って来る有象無象に疲れるだろうから、ささめみたいな裏のない人の好意や忠誠は信じられたろうし、傍に置いて邪魔ではなかったろう。

 

周りには「事情を知ったからには幼馴染としてほっておけない」と言っている。慎吾は変わってしまったけど、ささめはまだ変わらずに懐かしいままだったから、壊れる前に保護したのかもなと浮かぶ。

 

子供が生まれて、恩音と摩利が喜んだ描写があったし、妻の座を辞退ということは、嫁として迎えるという選択肢を鷹塔家が提示したと察するに、鷹塔家でのささめは、それなりに大事にされ、自由も得たのだと思う。ルペルがささめと一緒に鷹塔家に引き取られ育てられたことから見てもそう思う。(混血児の摩利としてはルペルをこだわりなく引き取り育てるささめ属性も安心材料だったのかもな)

 

でも、摩利がささめを愛するというのは、やっぱり想像がつかない。

恩音とマレーネの夫婦愛のようなものに摩利は憧れがあったはず。

でも慎吾以外の誰も、マレーネポジションに入れられないのだから、ささめがばあやのポジションで摩利のお世話をする関係性しか浮かばない。

 

でもそれでいいと2人が思わなければ、関係は続かないとすれば、

これは「利害一致」の関係ではあるのだろう。

摩利に幸せになって欲しいと願うファン心理からすると、利害の一致なんて寂しい。

 

私は一体、何に腹を立ててこんなにモヤモヤしているのだろうか…

じゃあ、摩利が誰とくっつけば少しはマシだったと思えるか。
じゃあ、どんな風な納まり方なら摩利は幸せだったと思えるのだろうか。

分かってる、私の幸せの尺度で見るからモヤモヤするのだ。

ささめも、摩利も、2人はそれで問題なく、問題があっても飲み込んで一緒にいられたのならそれでいい、終わり。

 

ああ、モヤモヤする(笑

 

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摩利が商人として活躍していくにつれ、摩利は慎吾と離れている時間が増えて、慎吾に対して取り繕わなくてはいけない時間が減り、根っこの暗さや黒さ、摩利の人間性のもげてる部分が出てきているだけかも。他人に対して興味が薄く冷酷。

 

人間関係の軽重は大人になれば自然と区別するようになる。

摩利の場合は重と軽の線引きが極端。0.01と0.99ぐらいな比率でがっさり引く線の、軽はほんとに悲しいぐらい存在が軽い。ささめは、軽の側だと思うんだけど、人畜無害という希少枠で特別扱いだったのかな(ああ分からない(考えても無駄(ため息と苦笑