総特集 木原敏江 エレガンスの女王

木原敏江先生をまだまだ追っかけ中。

『総特集 木原敏江 エレガンスの女王』図書館にありました。中身を見たら、ぜひログりたくなり、近々発注予定。

 

1968年/20歳から現在までの53年間、いまだ現役の漫画家と思ったら、木原先生個人の情報が知りたくなってきました。なんと、ちょうどいい本が出版されていたこと。

文中にありましたが「こんな本を出してもらえて、作家冥利、嬉しい(意訳」と書かれておりまして、確かになと思いました。

 

長く仕事を続けてきた方が誰しも評価されて、まとめを世に出してもらえる訳もなく…一つの世界、ブランドを構築できた証ですよね。

 

余談ですが、誰しもが経験や実績をまとめて、本や冊子、写真集など可視化できる総覧的なものにしてもらえたらいいのに、と思いました。

 

「今までの人生で、何か成しえたのだろうかと思っていたけれど、やれたこと、出来たことがこんなにあるじゃないか。頑張ったよな、えらかったぞ自分」と思えるだろうし、定年退職などの節目も、もっと誇らしげに迎えられるんじゃなかろうかと妄想。

ロングインタビューと、同世代のお仲間である萩尾望都氏と青池保子氏との対談、年表類、それに美麗なカラーイラスト集といった構成。


生まれ育ち、漫画家になった経緯、作品ごとの思い出など、人柄にふれるに十分な内容で、大満足(あとでポチろう…

私は、仕事の悩みの大半は職場の人間関係だったなと思っていますが、職業漫画家としての苦労も編集相手の人間関係とお約束で。馬の合う方、合わない方、編集方針に従わないといけないだろうし。編集がOK出したものを描いたら描いたで、読者人気投票の数字で評価されるシステムは時に作家の力量とは別の力学で数字が動くから、理不尽。商業誌で描くということは世間的には成功の姿だけど、いい事ばかりでも無かったんだなと、しみじみ。

苦労なく、順風満帆であんな深みと余韻のある話が作れるものか、と思うのです。私ごときでも、何かしら辛い思いを経験して、そこから立ち上がるたびに何かを考え、何かを得て加えて、加えて、成長してきたところがありますから。どなた様もその方なりの最高の試練を越えて今あるということ。

こういう、ただの読者では目にすることがなかった苦悩や、何を試してみたの、段々どういう思いに変わっていったとか、他人の人生は苦労話ほど参考になる気がします。


萩尾氏/青池氏との対談は、同時代に同じ様な経験をしながら現役仲間だから、苦労話が過去の笑い話になっているところもあって、三人とも非常に楽しそう。その空気感が心地よい対談。

 

お三方、それぞれ自分の描きたいこと、自分のスタイルに向き合っていて、互いを尊敬しているのが伝わってきて、打てば響くような語り合いが非常に羨ましく感じました。同じ言語を話しているというか、一を聞いて十答える的な、打てば響く感じが良いのです。

発表された作品を読めば、頑張ってるなとか、ちょっと調子悪そうだとか、不思議と互いの様子が感じ取れたものだ、と言い合っていて、仕事について理解してくれる親友がいるだけで凄い事なのに、それぞれが大御所、大ブランドだもの、羨ましいの桁が上がる上がる。

結局、何をなりわいにしようが、相手との共通言語、共通話題を持つためには、自分の人生経験や知識を深めていくしかなくて、時間はかかるし時に疲れることもあるが、こつこつ積み重ねる以外出来ない、というのが感想。お三方は、それを続けて今に至ったから、大御所となれたのだろうかなと。

 

 

分かってた。

近道はないって、分かってた(ため息

デビュー当時からの絵面の変遷、時々の美意識が絵になっていると思うと、変化の幅が凄い。一番好きな絵面は、やはり摩利と慎吾、封印雅歌のあたりの絵。実は、90年前後のあたり、ちょうど大学に進学した辺り、ぐっと絵が変わった気がして、好きなものが勝手に変わる事が嫌になった記憶。私は子供でした。その変化が成長と思えず「私の見たいものを量産する機械」を求めていたのと一緒。

今回、夢の碑も購入してまとめてその変化を眺めてみて、イラストや扉絵だけでなく、その物語もちゃんと読むと、納得の変化だなと思うようになりました。文中にありましたが「木綿や麻のパリッと硬い感じの布が描けない、絹になっちゃう(意訳」というの、よく分かります。線の表情は絶対ありますもの。だから、変わったと言えば変わったが、変わらないところが分かったという感じでしょうか。

 

 まだ読んでない作品も、おいおい集めて味わおうと思います。