死ぬまで現役、刺繍職人、辻口良保さん

暑いけれど爽やかな日。そろそろ日傘も出そうかなと思っていたら、刺繍職人・辻口良保、御年81歳から日傘が届きました。

 

辻口さんは、誂え帯の刺繍が専門の方。

誂え職人は、本来の仕事は人の好みを汲んで刺繍を刺す仕事で、自分の好き勝手を通す機会は、作家としての作品以外は、滅多にないことだと言っていました。

 

着物関係の職人さんは、ひとつひとつが非常に手間の掛かる仕事ばかり。分業制で、工程の上下がある仕事に関わっている職人は、自分の守備範囲を早く完璧に仕上げる事が第一ですから、もっともなお話。(そこを担っているのが悉皆屋さん)

 

いい年になったことだし、そろそろ、自分の好きに、自由に刺して楽しんでもいいかなと、今回の日傘もそんな感じで刺した模様だとか。

 

今回入荷した日傘は、ひょうたん柄と金魚柄の2本。

ひょうたん柄は店主も好きなモチーフ。どちらも涼しげ。

 

辻口さんは3代目。刺繍職人を多く抱えていた刺繍屋に生まれました。板の間に沢山の職人が並び、細かい刺繍を素早く刺していく。そんな職人の手元を眺めて育ち、自分もこんな美しいものを作る大人になると、子供の頃から迷いなく思っていたとか。

 

今まで付き合いのあった呉服屋さんや職人仲間もどんどん辞めて行く中、辻口さんは「手が動く限り、刺繍を刺していけたらなあ」と笑っておりましたよ。

 

辻口さんにとっての刺繍仕事は、好きだけではなく、苦労も重ねて来たことでしょうが、今は生きる張り合い、もっともっと好きな仕事になっているのだろうなと思います。

 

※日傘のお迎えは【こちらからどうぞ】