江戸切子若手職人15人展

先週の定休日に青山散策のついでに「江戸切子若手職人15人展」をのぞいて来ました。目の前の作品の素晴らしさに圧倒されて感動の嵐。

これまで、買いたいけど、買えないのよね…というアイテムが私にとっての切子で、どこかで「たかがグラスでしょ?」と、用途で価値を推し量っていたのですよね。

でも、きれいなものだと思い、宝石を手にするような気持ちで、美しい物が欲しいと思って見ていた20~30代の私。当時の切子へのイメージを打ち砕き、目に張った膜を取り去ってくれた作品の数々。

本当に、本当に美しかったです。

無料で参観できますから、ぜひ多くの方に見て欲しいなと思いました。



離れて全体を見れば、ひたすらに美しい光の表現。緻密な彫り線の重なりが織りなす幾何学模様。そこから発する光の反射が四方八方を照らし、幻惑されるような輝きで、ため息が出る美しさでした。

思わず近づき、よく見ると、

ひとつひとつの彫られた線は、定規でひいたような、機械的に通った直線という訳でも無いのです。例えば、交差した*のところを見ると、等間隔の*もあれば、ちょっといびつな*もある、といった具合。

平面な板なら、機械的に整った溝を作るような方々なんでしょう。でも、器物は様々な曲面で構成されていますから、人の目で見た時に自然な流れを感じるように、彫り線が配置され、幅や深さなど、頭の中に浮かんだ美しさを手先で再現していく過程で、揺らぎの中にピンと線が通るような生まれたのだろうなと妄想。

私が以前勤めていた会社の役員で「この線は、生きた線だね」という言い方で評価する方がいらっしゃいましたが、まさに「生きた線」で構成されている江戸切子。

ガラスを彫るのは、失敗できない一発勝負。
妄想族としては、最初のひと手の緊張感を思って無駄にドキドキしてしまう。

そして、彫るための集中力を途切らせない気力、凄い。息止めていられる時間=集中できる時間のわたくし、この作品を仕上げる時間の間に窒息死してしまいそう、なんて妄想(苦笑

帰り道に、伝統工芸青山スクエアで「お買い求めしやすい値段の切子」を見たら、ちょっと愕然としました。切子の美しさが伝わって来ないのです。15人展を見たおかげで、切子に対する見方や価値観が変わったんだなと感じた瞬間でした。


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明日の私は、相も変わらず10万するような切子のグラスには手が出ないと思いますが、手の届く範囲の商品の中から、より素敵な切子を見分けられるようになって、分相応にお金を使うことが、より楽しめるようになったんだな、と感じた瞬間でした。

いいものを、じっくり見る時間を楽しむこと、私にはやっぱり大切だなと再認識。