百日紅 Miss HOKUSAI 

主人公のお栄が、どう見ても友達のお店「たびえもん」の店長・ごっちんに見えて、変な感情移入して見ました。

 

チラシのキャッチコピーを見て気に掛けていたアニメだったのですが、勝手に妄想していた内容とは違った内容で、予想外に叙情的でいいお話でした。


ひとりの女性の生き様がテーマで、人生の激動系?と想像していたのですが、意外と淡々としずしずと綴られた、家族愛の物語として私はとらえました。

 

外目や仕事からはそうは見られないだろうけど、内面は繊細。


知人でもおりましたが、そのギャップがあればこそ、その人にしか感じることが出来ないことや、創りだすことが出来ない事ってあるものなのですが、意外と本人はそこがコンプレックスだったりして、劣等感の温床だったりするギャップ。

 

私にも覚えがあるもので、キャラの些細な動作に現れる感情表現に、引きこまれました。

 

父・北斎との関係性の屈折感。

でも、嫌なら側に居ない訳だから、分かりやすい好意、愛情。

 


お栄と妹のお猶とのやり取りがとても良かった。
目の見えない、体の弱い妹を、そっけない風ながら、

とても気に掛け、可愛がる姉のお栄。

 


年の差を越えた横並びの姉妹愛がありつつ、

まるで母と子のような愛情もあり、

嫁入り前の女性の母性の複雑な優しさを感じて、

自分を振り返ったりすると面映ゆく、

暖かいというか微笑ましいというか。

 

一方で、絵師としては、激しい競争心を見せたり、

凄い集中力と冷静な判断、商売感、鋭さも見える。

 

 

一人のひとが担っている役割とか性質とか、

何面もあるけれど、ひとりのひとの負うものだったり、

物語だと単純化されて分かりやすいけれど

人の人生はそれほど単純でもないから、

淡々としていても、いろいろあるやね・・・

という表現がしっかり出ているので、引きこまれてしまいました。

 

 

お栄の生きていた時代は江戸後期、明治との過渡期。

史実の記録で行方を追えなくなったのは58歳の頃。

彼女は死ぬまで、不器用丸出しの

飾らぬ調子で絵を描いて生きていたのだろうかと思うだに、

史実から消えた余生は、一体どんなものを見て、

描いていたのだろうかと、凄く興味がわいたラスト。


久し振りに、辛くない人生物語を見ました。

仕事の楽しさが分かり始めた女性にこそ、

見て欲しいかなと思うアニメ。