【残酷な神が支配する/萩尾望都】 2

あんなにモヤモヤと胸塞ぎだった「残酷な神が支配する/萩尾望都」

 

改めて読み直すと、違った景色も見えてきます。
今、同時進行的に読んでいる「人間アレルギー/岡田尊司」のおかげかもしれません。

 

母の再婚相手から性的虐待を受ける主人公ジェルミに目が行きがちですが、彼に関わる他の登場人物に目が行く余裕が出てきたら、別な物語にも見えてきました。

 

 ジェルミが、不安や不満を心に留め置けなくなり、不機嫌になったり、感情を爆発させるたび、周りは何か違和感を感じるのですが、本人が余計なことは言わないし、相手も踏み込まないし、そのまま素通りしてるんですよね。

 

再婚相手の異常性を垣間見て知っている大人は、もしかして!?と確信を持ちながらも、放置している。それは、余計な波風を立てるのが嫌だから。

 

ジェルミのように、自分の不幸よりも母の幸せを望む、なんて愛着ゆえに思い込みをする子どもは、普通にいます。性的虐待なんて他人に気軽に言えない内容だからこそ、相談もできない。これを言ったら、幸せな再婚をしたと思っている母親を不幸にすると思うから、余計に言えないし、その気持ちを利用する再婚相手を殺したいほど憎み始める。

本気で嫌だと思っていれば、拒絶も出来るし、助けも求められたはずというのは、他人の理屈なんですよね。当事者に出来ないから問題が複雑深化する。


例えば、大人にしたら何てことない話でも、子どもにしたら、今の自分では出来ないことや知らないことになると、どうしてよいか分からずひたすら悩むが、答えなんて出やしないのと近いかなと。

例えば、象を冷蔵庫に入れるには?という質問みたいに理不尽に真面目に対応しようとしても無理というのに近いかなと。(ちなみに、答えは「冷蔵庫を開けて、象を入れる」現実的になって、自分ちの冷蔵庫を思い浮かべて考えると出来ないかもしれませんが、視点を変えると事実はこの通り。

私にも、そういうところがあったなと思ったら、異常な設定の悲しくて恐ろしい物語に見えていた部分が、もしかして、私の世界にもある話になってきちゃった訳です。

モヤモヤは、だいぶ晴れました。


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と言っても、やっぱり異常な義父と、何かふわ~っとしているジェルミの母親を見ていると、ジェルミがこんなに辛い目にあってるのに、何でお前は!と憎しみに近い嫌悪感がわいて来ます。

続きを、早く読み、ひとまず義父が死んでしまうところまで見て、もう二度と嫌な虐待だけは起こらないぞと安心したくて仕方ないです。