日本人の坐り方

Aの本を読んでいて、文中に出てきたBが気に掛かり、興味が赴くまま次の本を借りる。そんな風に、系統立たない雑学が、私には積み重なっている気がします。

クリスタルボウル演奏会を聞いて、あの独特の音は【倍音】というものだと聞き、【倍音】に関する本を読み、そこから【密息】なる呼吸法を知り、【密息】の解説中に、日本人は西洋人に比べて【骨盤が倒れている】とあり、骨盤が倒れているというのは何故なんだろうから流れて、日々の姿勢や動きに関わるんだろうと予想をつけ、そして至ったのが本日の一冊『日本人の坐り方/矢田部英正」

この本は、当時の肖像画や文学に記録から、どんな衣装風俗で、どんな動作をしていたかを引いて説明されており、その流れを読み知ると、絵巻物など昔の美術資料の見方が変わること請け合い。

そして、正座は日本人の坐り方としては歴史的に浅く、時の権力に押し付けられた坐り方。韓国の歴史ドラマを見て、女性が立て膝しているのに違和感を感じたことがありますが、日本も元は立て膝だったと分かり、意外。驚き。

韓国の歴史ドラマのあれは、『はしたない』という方が多々いらっしゃいましたが、日本もあれが普通だったということは、『はしたない』という感覚も、刷り込みの常識に作られたものなのです。ほんと、驚きです。


店主的超要約。

江戸時代1630年代で現在の体に沿った着物の身幅になるまでは、男女ともゆったりした寸法の着物を着ていたので、坐っている時の足捌きはかなり自由だった。女性も、立て膝をしたり女の子坐りをしたり、膝を開いた坐り方をしていた。

江戸時代に入り、幕府は反物の幅を狭めて、膝を開かずに座る方向へと規制。それでも、作業中は立て膝をしたり、まだまだフリーダム。帯が邪魔なので背もたれ文化が発展せず、脇息にもたれて立て膝をする女性の図が残っている。

今でこそ正座がきちんとした坐り方のように思われているが、明治の頃はまだ正座という名前がなく、大正の頃にようやく出て来る。つまり、この辺りで、日本人の正しい坐り方は「正座」と作られた。

正座は膝や足首に負担が掛かる坐り方。
利休はお茶を点てる時はあぐらに近い安座だった。立て膝で点てる人もいたようです。

江戸時代の武士は外で殿様の出待ちをしている時は、袴の膝をついたら汚れるから、ヤンキー座りで待っていたというのも、面白い。

相撲の蹲踞そんきょのように、しゃがんだ時にお尻をかかとに乗せて(かかとに座って)くつろぐのが普通の動作だったとか。

昔の坐り方は、股関節、足首の関節がかなり柔らかくないと出来ない姿が多く、今の日本人には出来ない姿が多そうです。