【本日のひと品】水うちわ

岐阜の伝統工芸品「水うちわ」

和紙を使っているのに半透明の透け感と艶のある質感が涼を感じさせる団扇です。

使われている和紙の原料は雁皮という低木。

沈丁花の仲間だそうです。奈良時代から紙の材料として使われてきたとのこと。繊維が細くて光沢があり、薄くて緻密な紙となるため、筆で書いてもにじみが少なく、高級紙として扱われていたようです。

この雁皮は、紙を漉くまでに蒸して繊維を取り出すまでがとても手間がかかると聞いたことがあります。

和紙の製造工程は大きく3つ。
繊維を取り出しやすくするために似たり蒸したりする「煮沸」、繊維を取り出すために叩く「叩解こうかい」、紙を漉く工程「抄紙」の3つ。

 

雁皮の大変なところは叩解時に外皮が細かく割れて繊維内に絡み、それを取り除くのは機械的には不可能なので手でひとつひとつ取り除く作業が必要なのだとか。

そうして出来上がった雁皮紙は、店主世代だと「ガリ版印刷」の版に使われていた記憶が残っています。小学校の壁紙新聞で使いました。それ以外の場所でわざわざ手に取ったり見る機会が無かったように思います。

原料の雁皮が成長に時間のかかる植物で栽培が難しく、野生の雁皮を使うことが多いそうですが、その野生の雁皮の収穫量が落ちたところに、紙すきを生業とする方々が急激に減ったことで、雁皮紙はますます高嶺の花になっていったようです。

まあ、今は海外から雁皮を輸入したり、グローバル化が進んでいるようですが、手間のかかるところは相変わらずなんだとか。

そんな雁皮紙を団扇に張り、天然ニスを紙に含浸させて乾燥させると 透き通った透明な様子になります。ニスのおかげで水を弾きますから、川遊びの時に水に浸して仰ぐことで飛沫を浴びて涼しさを感じたと言われています。


 

水うちわの水は、見た目の透明感と水遊びの水が掛かっているのかなと店主は思います。 

 

ところで、この水うちわ、岐阜出身の方が「見たことがない」というぐらいですから、最近目にするようになったとはいえ、もともと生産量が少ないのでしょう。それもあって、価格は団扇にしては少々お高いです。¥5000なり。

小さいのに良い風がきますから、店主的には実用して楽しんでいただきたいのですが、環のお客様うちでは、お高いせいかインテリア装飾として飾られる方の方が多いようです。目で楽しむ涼感ですね。(小さい飾り台付きで立てて飾ることも出来ます)

こちらの水うちわ、数が少ないですが取り扱いしております。通販のページはこちら