硯箱の製作過程~その1

お客様は、環で有田焼の硯をご購入された方。男性です。お仕事で筆文字を書く機会が多い方で、せっかくなので、調度いい硯箱を探して欲しいというご依頼でした。

 

お話を受けた時には、いわゆる書道具を扱っているところに問合せて、調度いいお品が見つかればその書道店をご紹介して終わろうかと思ってお受けしたお仕事。

 

いくつか当たってみて分かったのが、最近はコンパクトな硯箱はほとんど作られていないということ。やっとひとつ見つけたのですが女性用の意匠でとても男性が持つような雰囲気ではありません。

 

ただし、木地の形自体はお客様のニーズに合致しそうです。まずはそのカタログ写真を見て頂き、配置やサイズをご説明して印象を伺ったところかなりイメージに近いとお客様。

 

その女性用の硯箱を販売している店に別注可能か問い合わせたところ、分業で工程毎に関わる工房が違うため、別注品は効率が落ちるので最低20個は発注してもらわないと対応出来ないという回答。

 

1個だとどのくらい割増になるのか聞いたところ、「倍以上」と即答です。どういうことかというと、各工程を担当する工房でそれぞれ2割なり3割なり別注割増料金が発生するので、積み上げるとそれだけの金額になるということ。

 

事情は分かりますがお客様の立場に立つと納得しにくい金額になります。そこまで高いとなると、価格交渉しても下がったところで間に合わない金額だと予想されるため、あっさりお断りしました。

 

思ったよりも難航。簡単に終わるであろうと思っていたので、少々焦りだした店主です。

 

(次回へ続きます)